AGAとヘアサイクル(毛周期)の仕組み
人の毛は新たに生え、成長し、抜け落ち、また生えるというサイクルを繰り返しています。
これを「ヘアサイクル(毛周期)」と呼びます。
ヘアサイクルは永遠に繰り返されるわけではなく、回数に限度があります。
ヘアサイクルの回数には個人差がありますが、AGAの患者さんの場合、男性ホルモンの作用で周期が乱れてしまうことにより薄毛が進行します。
こうした理由から、AGAの予防や治療にはヘアサイクルのしくみを知ることが不可欠なのです。
健康な髪の毛周期(ヘアサイクル)
ヘアサイクル(毛周期)は、「成長期」「退行期」「休止期」の3つを1クールとして、髪の生え変わりを繰り返しています。
成人の頭髪は毎日100本が抜け変わっており、髪一本一本が異なるサイクルをもっているため、およそ10万本あるといわれる頭髪の本数が保たれています。
健康なヘアサイクルでは、次のような周期を生涯で15~20回程度繰り返すと言われています。
・成長期 2~6年
古い髪が抜け落ち、新しい毛髪が生まれ、成長していく時期です。毛母細胞が分裂を開始し、新しい髪が古い髪を押し出すように伸びてきます。健康なヘアサイクルの人では、頭髪全体の90%が成長期です。
・退行期 2~3週間
毛乳頭細胞が退縮し始め、髪の成長が止まる時期です。毛母細胞の分裂がストップし、休止期を迎える準備に入ります。
この時期の毛髪は全体の1%程度です。
・休止期 3~4ヶ月
毛乳頭細胞の活動が休止し、髪の成長が完全に止まります。
この時期には、次の成長期に向けて準備を行います。
髪全体の10%が休止期で、再び成長期に入り新たな髪が伸びてくると同時に抜け落ちます。
▫️乱れたヘアサイクルとは
一方で、男性ホルモンなどの影響を受けると、ヘアサイクルは次のような乱れが生じます。
・成長期の短縮
成長期が短くなることで、髪が充分に太く長く成長することができなくなります。
そして短くて柔らかい髪が抜け落ちてしまい、髪全体のボリュームが減ります。
・退行期は変わらず
退行期に大きな影響はなく、毛髪の成長は2~3週間の休止状態に入ります。
・休止期
休止期は長くなります。
さらに頭皮の血行が悪くなると毛母細胞栄養が行き届かず、新しい髪が生えてこないこともあります。
✖️ヘアサイクルを乱す原因
ヘアサイクルを乱す原因には、複数考えられます。第一に男性ホルモンの作用、次に血行不良、そして加齢です。
🆖ヘアサイクルのNGポイント
・男性ホルモンの作用
男性ホルモンのテストステロンそのものが、ヘアサイクルの乱れを引き起こすわけではありません。
テストステロンが体内の皮脂腺に多く存在するⅡ型5αリクターゼという還元酵素と結びつき、ジヒドロテストステロンという物質に変化した物質が頭髪の毛母細胞に作用し、ヘアサイクルの成長期を6ヶ月~1年に縮めてしまいます。
・血行不良
運動不足などにより頭皮の血行が悪くなると、毛髪の成長に必要な栄養素が行き届かず、新しい髪が生えてこない原因になります。
・加齢
人間のヘアサイクルは、15~20回ほどを限度として繰り返されます。
もともと回数や各周期の期間には個人差がある上、年齢を重ねるとさらに変化することが考えられます。
日本人男性の場合には20代後半からAGAになるケースが多く、30代で20%、40代で30%、50代以降で40%以上の方が発症すると報告されています。
このデータからも、加齢がヘアサイクルに何らかの影響を与えていると言えるでしょう。
▫️自分でできるヘアサイクルのケア
健康な毛周期を維持するためには、ヘアサイクルの成長期を縮める原因と考えられる要素を排除、抑制することが大切です。なぜヘアサイクルの乱れてしまうのか、はっきりとした原因はまだわかっていませんが、頭皮の血行を改善、アンチエイジングに努めることが大切なポイントです。
日常生活で次のことに気をつけると、ヘアサイクルの正常化につながります。
💡ヘアサイクルケアポイント
・ストレス解消
ストレスによって自律神経の「交感神経」の緊張状態が続くと、男性ホルモンが増加することがわかっています。
男性ホルモンが増えるとヘアサイクルを乱すジヒドロテストステロンも増加します。
健康なヘアサイクルを維持するためには、日々のストレスを早めに解消するように努めましょう。
・運動を習慣化する
血行を良くするために、定期的な運動をするといいでしょう。
ただし、ハードな筋トレなどの無酸素運動は男性ホルモンの分泌を促進するため、ランニングやウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
・禁煙
たばこは体内に大量の活性酸素を生成し、体の老化を早めます。
また活性酸素は、ジヒドロテストステロンの生成を抑制する亜鉛を大量に消費します。
喫煙は、男性ホルモンの作用と老化の両面から悪影響があると言えます。
・バランスの取れた食事
ジヒドロテストステロンを増加させるⅡ型5αリクターゼは、栄養不足によって活性化します。普段の食事で、亜鉛をはじめとするミネラル、ビタミン、たんぱく質などをバランスよく摂取するようにしましょう。